2026年5月 記事016 再留の現場に月光川のこだわりを見た

今日は2回目の蒸留である再留の現場を観察しました。

樽に詰める原液を作るには蒸留を2回繰り返す必要があり、その一回目が前回のコラムで報告した初留で、二回目が再留です。再留で回収したアルコールは全部が樽詰めに向かうのではなく、蒸留工程の中間部分だけが本留として樽詰めに進み、残りの前半と後半部分のアルコールは余留として、翌日の再留に向かいます。

ですから、蒸留庫にはタンクが3つ並んでいて、それぞれに初留、余留、本留のアルコールが入ります。この日、再留を担当したユウスケさんの最初の作業は初留液と余留液の量を計り、アルコール度数と糖度などを分析することでした。アルコール度数は初留液が24%前後、余留液は41%前後です。これをポットスチルに順番に送り込むと、ポットスチルの窓ぎりぎりまで液体が満たされて蒸留が始まりました。

スチル内の温度が80度を超えるとアルコールの揮発が始まり、蒸発したエタノールはポットスチルのネックにぶつかってアームへと流れ、冷却水が通るコンデンサー部分で冷やされて液体になり、スピリッツセイフ(検度器)の蛇口から透明の液体として出てきます。最初はちょろちょろだった蒸留液はすぐにドバドバといった量になるので、蒸気圧を落として、流量を適正に維持します。蒸留液のアルコール度数はしばし上昇が続いて10分後ぐらいにピークを迎えます。

「だいたい、78~80%でピークアウトして、その後は少しずつ度数は落ちていき、最後は数%にまでなります。最初の度数が高い蒸留液は揮発性が高く、ツンとした刺激臭と不快な成分が多く含まれているので余留タンクに送ります。そして、アルコール度数が下りながら風味が穏やかにかつ豊かに変わったタイミングで本留タンク送りへと切り替えます」とユウスケさん。

この余留から本留へと切り替えるタイミングを「ミドルカット(開始)」とウイスキーの世界では呼んでいます。月光川蒸留所はここに徹底的なこだわりがあるようです。ミドルカットの判断を、その日、蒸留所に出社している職人全員が集まって、皆で意見交換をして判断をしています。「僕が知っている範囲だと、ミドルカットを1人の職人が判断するのが一般的です。2人ということもあるでしょうが、うちでは必ず3人以上ですね」とユウスケさん。月太郎が参加したこの日は5人が各自の作業を中断してスピリッツセイフの前に集合しました。

ユウスケさんはスピリッツセイフから流れ出てくる蒸留液をグラスに注いで、これを全員が順番に香りを嗅いで、さらにほんのわずかに口に含みます。これをほぼ1分置きに繰り返します。全員が真剣な表情でいて、月太郎が軽口をかける雰囲気ではありませんでした。最初は誰も反応がありませんでしたが、3杯目あたりから、「もう少し」といった声が聞かれるようになり、6杯目にして、全員が目くばせしながらユウスケさんにゴーサインを出しました。ミドルカット開始でした。アルコール度数77%で、蒸留開始から約1時間が経過していました。

正午を過ぎると、本留送りから余留送りへと切り替える「ミドルカット終了」が近づいてきます。アルコール度数が71%を切るころに、ユウスケさんがメンバーに10分後の集合を呼びかけました。今回の参加者は4人。こちらは7杯目で本留から余留への切り替えが決まり、実施されました。ミドルカット開始から終了までおよそ2時間半でした。

その後も蒸留は続き、蒸留液のアルコール度数は下がっていき、2%を切ったところで蒸留は完了でした。この日は再留の作業8時間を密着させてもらいましたが、カットのタイミングを出社した全員で決めるというこだわりに「美味しいウイスキーを造りたい」という月光川蒸留所の強い思いを確認できた一日でした。