記事014 鳥海山の豊かな水を巡る~その3=神泉の水

月光川(がっこうがわ)蒸留所のウイスキーの出発点ともいえる美味しい水とつながる鳥海山麓の湧水や滝、渓谷や池など豊かな水を訪ね歩いてみたいと思います。第三弾は「神泉の水(かみこのみず)」です。

月光川の河口から海岸線を北へ上がって秋田県の県境がすぐそこの女鹿(めが)地区にあります。集落の中心を走る道を進んでいくと、道路の右手(山側)にコンクリート製の縦長の長方形の水場が現れました。

水はここで湧き出しているのではなく、右手の山の中腹にある湧水からパイプを使って引いて、住民が普段の生活で使いやすいようにしているようで、山の神から水をいただいたということで「神泉の水」と呼んでいるのだそうです。以前から集落の生活の生命線であり、シンボルです。

コンクリート製の長四角い水槽は若干の段差をつけて6つの槽に分けられて並んでいて、水は水槽を溢れながら下の水槽へと流れていきます。集落では水槽の使い方に厳然たるルールがあって、1番上の水槽は飲用に、2段目は野菜や果物を冷やすため、3段目は野菜や海藻を洗う場所。4段目が洗濯用、5段目で泥がついた農作業の道具を洗い、6段目が子供のおしめなどを洗うのだそうです。

水道が普及するより前は多くの住民が集まって、それぞれの作業をしながら情報交換をする集いの場でもありました。もちろん、いまは、使う人は少なくなったようですが、この日、月太郎が現場にたどりついた時、ちょうど、近所の女性が野菜を洗って自宅へ運ぶところでした。

さらに、しばらく佇んでいると軽自動車が現れ、高齢のご夫婦が車からたくさんの空のペットボトルを持ち出し、一番上の水槽で水汲み作業を始めました。「何に使うのですか?」と尋ねると、「ここの水でお茶を淹れると水道水よりもはるかに美味しい。3、4日に一度は汲みに来る」と話していました。

月太郎も柄杓で水をいただきましたが、柔らかくて円やかな味わいで、するっと飲めてしまいました。